雨の銀座/東京夜景
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大判錦絵 水性多色木版(和紙:越前生漉奉書) ・イメージサイズ 240×360mm ・紙サイズ 270×395mm 絵師:つちもちしんじ 彫版:柏木隆志 摺り:河合敦史
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―東京夜景―
土屋光逸の描いた銀座の絵がある。摺師だった曽祖父の遺した摺本を見ていたとき同席していた浮世絵研究者の方に教えて頂いたものだ。江戸から明治、大正、昭和に入り、どんどん移り変わる東京の風景。雨の夜、銀座は光に彩られている。 つちもちさんに原画を描いていただくことになったとき、つちもちさんの作品には不思議なノスタルジーがあると思った。これからつちもちさんに描いてもらう東京の風景は、木版画の歴史上断絶した光逸以後の東京で、昭和、平成、令和と変遷する時代のなか、街はどのような変化をして来ただろうか。 偶然だがつちもちさんと私は同い年で、ともに生まれたときから東京に暮らしてきた。私達は1979年生まれでちょうど小学校卒業の頃バブルが弾けた。氷河期世代と呼ばれた私達は、物心ついてからずっと東京の巨大な落日を見続けてきたような気がする。 そんな訳で、つちもちさんに東京の夜景を描いて欲しいとお願いした。時代は平成から令和に移って現代の夜はさらに光に溢れている。
―摺り―
摺師として特に気を使ったのは、絵全体の光の明暗を上手く表現する事です。“光“はその時代の独特の空気を内包しています。例えば、川瀬巴水などが活躍した大正、昭和初期の新版画は、時代を越えてファンが多いのも、昔の風景だけでなく、光のトーンからも、古き良き日本の空気が感じられ、ノスタルジックな気持ちを呼び起こせられるからです。絵師つちもちさんの原画は、伝統的な新版画の流れにプラスして“現代の光“を見事に表現されています。また、版元である都鳥さんの偏光顔料を使用するアイデアは、まさに“令和時代の光“を描写しています。それらを踏まえて、摺の技術を使うことで、木版画ならではの光の表現ができるように尽力しました。もし、現代人だけで無く、数100年後の未来人もこの作品を鑑賞した時、私たちが今生きている時代の空気を感じて欲しいと願っています。 また、空の上部の雲ようなぼかし(当てなしぼかし)は、広重の“大はしあたけの夕立“にも使われている伝統的技術です。実際にやってみて、雲のようなふわふわと自然な感じでぼかすのが非常に難しく感じました。今回の作品では、浮世絵時代からの伝統的な技術も使用しています。そのような場所にも注目すると、木版画の鑑賞をより深く楽しめると思います。 摺師 河合敦史